簡単!ワクチン接種のしくみ

分かりやすいように、図などを入れてまとめてみました。是非ごらんください。
ワクチン接種についてその仕組みほど、わかりにくいものはありません。
「なぜ子犬の時期に何回も受けなければならないの?」
「短期間に連続して打つのはなぜ?」
「どんな予防効果があるの?」
「値段はいくら?」
「そもそもワクチン接種ってなんなの?」
回数 | 店員さんの話 | 獣医さんの話 | A書籍 | B書籍 |
1回目 | 生後42日後 母親の抗体が切れるのがこの時期だから | 生後48日後~56日後 | 生後50日後頃 | 生後60日後頃 |
2回目 | 獣医に相談して決める | 1回目の3~4週間後 | 生後90日後頃 | 生後90日後頃 |
3回目 | 獣医に相談して決める | 2回目の3~4週間後 |
上の表を見ればお分かりと思いますが、命を落とすような感染症から子犬を守るワクチン接種は、回数や時期がきちんと決まっていません。
免疫/抗原/抗体
では、ワクチン接種のしくみについてご説明します。
ワクチン接種とは動物の免疫力を利用して抗原を注射して抗体をつくりだすことです。
免疫とは、「一度かかった病気には、2回目はかかりにくくなる」ということです。
「一度だまされたら二度と同じ手は食わない」という事です。
ワクチン接種は、この「だまされる経験」を意図的になるべく安全に経験させることです。

1. 感染症のウイルスの毒素を弱めた「抗原」(これがワクチン)を注射します。
2. 免疫が機能し、この悪者を退治する「抗体」が体内で新たにつくられます。
(このとき、毒素を弱めているので、実害はないままに、ウイルスに打ち勝つ兵隊である「抗体」だけがつくられるわけです。)

抗体がつくられれば、凶悪なパルボウイスルやジステンパーのウイルスがもし体内に侵入しても、事前につくってある「抗体」でこれらをガンガン退治するわけです。
つまり、将来確実にやってくるであろう外敵に対して、事前にシュミレーションして勝つための準備をしておくわけです。
ところが、ここで問題があります。
現状ではその抗体の効果が切れる時期を正確に予測することはできないのです。
また、ワクチンの効果については、だいたい1年間とされています。(アメリカでは2年間ですが)
現在では8種混合など、さまざまな感染症の対抗ワクチンがセットになって接種(一回5,000円~1万円)となっていますので、これを一年に一回打つのです。

「なるほど。じゃあちゃんと一年に一回予防接種すればよいわけね。生まれてすぐワクチン打って、その一年後にまた予防接種すればいいんじゃない?
子犬のワクチンは生後50日、90日、120日、ってどういうこと?
ってなりますよね?
ここでさらにワクチン接種を複雑にしている、生後間もない子犬だけに起こる特有の問題があります。
母親からの移行抗体
それが「母親からの移行抗体」です。
「母親からの移行抗体とワクチン接種の悩ましい関係」
人間の赤ちゃんがお母さんからもらう母乳には、赤ちゃんを病気から守る免疫物質(抗体)を非常に多く含んでいます。抗体が赤ちゃんの呼吸器や粘膜の表面をおおって、大腸菌やチフス菌、ウイルスなどが侵入して病気になるのを防いでくれるのです。犬も同じです。

子犬は、初乳によって(最初に飲む母乳)あらゆる病気に対する抗体を母犬からもらいます。これを移行抗体(お母さん抗体)といいます。しかし、この移行抗体は42日~150日で消失してしまうのです。以後は自分で抗体を作らなければいけません。
そこで、移行抗体が無くなりかけたときにワクチンを打つのです。しかし、ここで問題があります。
「犬の抗体はある一定期間で切れてしまうが、その切れる日にちを特定することはできない」という問題です。
移行抗体がいつまで子犬の体内に残っているか、わからないのです。なぜこのことが問題なのでしょうか?
それは、この移行抗体が残っている時にワクチンを打っても、移行抗体がワクチン(抗原)をはねかえしてしまうので、犬の体内で抗体が作られないからです。
移行抗体がいつ切れるかは、母犬からどれくらい抗体をもらっているかによって違ってきます。
もしも「抗体がなくなっている」ことがわかり、急いでワクチン接種をしても、体内で抗体がつくられるまでに2週間程度かかります。この間にウイルスが侵入してしまったら意味がありません。
ということで、「最も早く抗体が切れてしまうケース」を想定して、第一回目のワクチン接種をします。
それが、最短で生後42日目といわれています。
第1回目=42日目(絶対に打つ)
打つワケ→「お母さん抗体(移行抗体)がもう無くなってしまって(切れるのは最短で42日)、子犬自身が抗体をつくっていないかも?早めに打っておこう!」
第2回目=90日目(絶対に打つ)
打つワケ→「1回目ワクチンがお母さん抗体(移行抗体)にはじかれて、まだ子犬自身が抗体をつくっていないかも?いつお母さん抗体が切れるかわからないから、打っておこう!」
第3回目=120日目(念押しで絶対打つ)
打つワケ→「2回目ワクチンもお母さん抗体(移行抗体)が頑張っていてはじかれたかも?お母さん抗体がいつ切れるかわからないから(お母さん抗体頑張るのは、長くても150日)念押しで打っておこう!」 かくして、以下のようなスケジュールができあがったわけです。
子犬には生後42日~60日を第1回目として一ヵ月おき計3回というワクチン・スケジュール

ところが、このワクチン接種の難しいところは「接種のタイミングが早すぎて失敗するより若干遅く接種したほうがまだマシ」というところがあります。
1回目ワクチンがお母さん抗体(移行抗体)にはじかれた直後に、移行抗体がなくなってしまってウイルスに侵入されたら最悪のケースです。
少しでも「移行抗体ががんばって外敵を排除している時期」よりも後にワクチン接種したほうがよいのです。
「なーんにもない無防備状態」よりも「消えかかっている移行抗体がある」方がまだマシ、というわけです。
ですから、現在の動物病院では、42日目よりも若干遅めの60日目(生後2ヶ月)を第1回ワクチン日としているとこが多いようです。
子犬が感染症で死亡してしまう理由のひとつが、この「移行抗体がなくなってしまう時期を特定できない」問題にあります。
この問題は根本的に解決することはとても難しそうです。だからといって、子犬が感染症にかかってしまうのは仕方がないの?というと・・・
感染した犬が近くにいなければ、まずかかるはずがないのです。