1頭目のしつけが大事
飼い方を直さない限り悩みが倍になるだけ、犬を2頭以上飼おうとする人は、注意が必要です。
一番多い失敗は、一頭目の犬がよく吠えるので、次の犬は吠えない犬にしようとか、一頭目の犬が言う事を聞かないので次は頭のいい犬を飼おうなどと考えることです。
犬がよく吠えたり、咬んだりイタズラするのは、犬の種類ではなく、飼い方の問題なのです。一頭目の犬が無駄によく吠えるとしたら、その犬のせいではなく、吠えるようにしてしまっている飼い方に原因があります。この原因を直さない限り、次にどんな犬を飼っても、やはり同じように吠えてしまうのです。
とくに、私たち人間が教えるより、犬が犬に教えた時のほうが数倍早く教えてしまうのです。何も考えずに2頭目の犬を迎えた方たちの多くは、先の1頭目に悩んでいたお悩みが倍になるだけなのです。
次に、留守がちの家などで寂しいだろうからといった気持ちで2頭目を飼うことです。犬は愛情に対してどん欲であり、その愛情は自分が信頼した飼い主さんからだけのものなのです。人間のほうの勝手な思い込みで寂しいだろうからと新たな犬を飼い始めることは、いままで独り占めしていた飼い主さんの愛情が半減したと解釈されます。突然やってきた新たなライバルに余計神経をすり減らすことになりかねないのです。
犬の心の動きとは
新たに2頭目の犬をむかえるときには、飼い主さんはしっかり犬の心の動きを知っておく必要があります。今まで自分一人が愛されていた家庭に、ある日突然ライバルが現れるのです。コレは犬にとっては歓迎すべきことではありません。飼い主さんは仲のよい一つの群れにするべく努力をしなければなりません。先にいた犬が優しい性格の犬の場合、一見おとなしくお兄ちゃんやお姉ちゃんになったように見える時があります。しかし、実際には犬の心は自分だけの飼い主さんの浮気に対し、落胆しているのです。
やがて自ら身を引き、おとなしくなったように見えますが、本心は飼い主さんから心が離れ、不信感に満ちた暗い性格に変わっていっているのです。逆に、気の強い性格の犬の場合は、新しい犬に対して喧嘩をしかけ、ときには血を見るほどに激しく争います。
子犬はどうしても手がかかります。飼い主さんは平等に接しているように感じても、実際には接する時間の八割は子犬にかかっているのです。撫でたり、褒めたりするだけでなく、叱ったりするのも、やはり子犬をかまっていることには違いがないのです。飼い主さんの不用意な行動は、先にいた犬を不安にするだけでなく、新しく来た犬のためにもなりません。
リーダーの職務放棄
よく犬の世界の順序は犬に決めさせ、人間はむやみに干渉しないほうがよいという意見もあります。確かに2頭以上の犬をある場所で放し、放っておくと、何回かの喧嘩をした後、落ち着いた群れになることがあります。
しかし、このとき、群れ内に秩序は自分達で決めた結果であることから、飼い主さんのリーダーシップは発揮されなかったことになります。群れのリーダーは単に群れの生死を決める行動を選ぶだけでなく、群れ内の秩序を守る義務もあるからです。このことを本能的に知っている犬たちは、群れ内の順位争いやイザコザを放任した飼い主をリーダーとしての職務放棄とみなします。
従って、群れ内に秩序が戻ったとしてもそれは犬同士の秩序であり、飼い主がリーダーであるとの認識は消えてしまう結果となり、それ以降のいろいろな教えや注意がきかなくなる恐れがあるのです。リーダーとして認められなくなれば、叱っても気にしませんし、逆に褒めても心から喜んではいなくなってしまいます。
先住犬を立てる群れルール
新しい犬を迎えた時、飼い主さんはなにかにつけ先にいた犬を立てる必要があります。新しい犬を叱る時にも、先にいた犬に対し、「ちょっと叱ってくるね」 と一声かけてから叱りに行くぐらいの態度が必要です。お散歩に行く順番、玄関から出る順序、帰ってきて手足を拭く順番も、すべて先にいた犬を優先します。
もちろん、食事も2頭同時にヨシと声をかけるのではなく、先にいた犬から順番に声をかけていきます。先にいた犬を撫でているときに新しい犬が近寄ってきたときは無視し、新しい犬を撫でているときに先にいた犬が近寄ってきたら、いま抱いている犬をおろして先にた子を膝にのせます。2頭でオモチャなどを取り合ったときは、必ず先にいた子に渡すようにします。
喧嘩は両成敗ではく、必ずあとから来た犬を叱ります。先にいた犬がおとなしい犬ですぐ譲ってしまうような場合も、犬に任せずリーダーである飼い主さんがしっかり補助して、群れ内の順序を守らせるようにします。こうした飼い主さんの毅然とした態度により、群れのルールを知った2頭は、やがて本当の群れとなります。一つの群れになったと確信した2頭は、先にいた犬はあとから来た犬をかばい、後から来た犬は先にいた犬を慕うようになり、しっかりとしたリーダーのもとで真の家族になれるのです。
PHP研究所:犬の頭がグングンよくなる育て方~抜粋